アントニー・デ・メロ著 古橋昌尚・川村信三訳
――実際の瞑想の方法・思考等をメロさんの指導(言葉)を持って解説して行こうと思います。瞑想のやり方は、経験に富んだ先生から直接、ご指導を頂いた方がよいのかもしれません。しかし、これといった先生もおらせない方の為に、メロさんの言葉を頂いても深い瞑想に導いて下さると信じます。まず、この著書の‶はしがき”からの文面をご紹介させて頂きます。
「エクササイズを始める前に、いつも時間を掛けて、以上に示す心の準備をおこなわなくてはならない。すなわち私がこのエクササイズを行うのは、自分一人だけのためではなく、自らその一部をなしている被造物全体の益のためにも行うのだということ。また、自分が経験するどんな変化も、何らかの形で世界の人々の為になっているのだという心構え。意識的にこうした心構えをもって臨むのと、持たないで臨むとでは、どんな大きな違いが出てくるか・・・・それにき気づいた時、さぞ驚かれるだろう。
本書は、黙想者を知性から感覚へ、思考からファンタジー、感情へ、――さらに、願わくは、感情、ファンタジー、感情を通って〈沈黙〉へと――導く、その様な目的を持って書かれたものである。従って、本書をテラスへ登る為の梯子のような物として用いてほしい。ひとたび、テラスにたどりついたなら、かまわずひ梯子を放り投げてしまいなさい。さもなくば、あなたは空を眺めることもできますまい。――〈沈黙〉に至った時、この本はあなたの敵になるだろう。すぐさま、投げ捨てなさい。

【沈 黙】 融 合
自己のふかみへと降りてゆく、
そこで、マントラ、祈りの言葉を見つけてください。
マントラとは、心臓の鼓動のリズムに合わせて唱える祈りの言葉・・・・
あなたの心の切なる思い、あなたの愛がおのずとあらわされたもの・・・・
初めのうちは、それをはっきり聞くことが出来ないでしょう・・・・
しかし、それも徐々に大きく、はっきりと聞き取れるようになってきます・・・・
さあ、今あなた自身のすべて、身体全体に鳴り響いている言葉、
マントラにじっと耳を傾けてみて下さい・・・・ あなたの心臓、あなたの頭、あなたの手足、あなたの腹に鳴り響いていることばに・・・・
そのことばを、あえて声に出して発音しないように。 ただ、耳を傾けるだけでよろしい。 このことばが自分の内に鳴り響いている間、自分は欠けたところのない統合されたものになる。そう思うと、喜びで満たされることでしょう・・・・
続いて、そのマントラが、あなたという存在の境界を突き抜けて、 まわりの世界へと侵入してゆく、その様子を眺めてみよう・・・・ ――マントラは地球全体に広がり、空にまで・・・・ そして、全宇宙へとしみこんでゆく・・・・
あなたは、まるですべてのものの中心ででもあるかのよう。 マントラがあなたから出て波紋を描くように広がり、この世界の境界へと伝わってゆく・・・・
あらゆる被造物が、あなたの心臓の鼓動のリズムにあわせて、波打っている。 その様子を目にしてください・・・・ また、あなたの秘密のマントラのリズムに合わせて、全被造物は波打つ・・・・ さまざまな植物や小鳥たち、石や木々や星、 そして、太陽もすべてのこの言葉とともに響き合っている・・・・ このマントラの響きによって、すべてはひとつに統合される・・・・
さて、この言葉と混ざり合い、融け合ってみてください・・・・ 言葉とともに、ひとつに融けあう・・・・ 今、全力をこめて、そのマントラを、心の内で叫んでみよう・・・・
【黙 想】 感 触
皮膚の感覚をことごとくに集中してみてください・・・・ まず、頭のてっぺんから始めて、 徐々に下へ降りてゆき、足の爪先にまでたどってゆきます・・・・
身体の部分によっては、何も感じないところがあっても、全くかまいません。 ただ、そうした感覚を感じ取ろうとしさえすれば、この黙想によって益がもたらされるでしょう。さて、それぞれの感覚は生化学的な反応であり、 生きてゆくためには、神の全能の力を必要としていることを、思いめぐらしてみましょう・・・・
こうした感覚を経験するたびに自分は、神の力を感じているのだと想像してみてください・・・・
感覚を味わるたびに、これは神が触れているのだと考えて下さい・・・・ 荒っぽい感触、滑らかな感触、心地良い感触、痛々しい感触など・・・・
神がこのように触れられることによって、 各部分は光を放ち、そこに癒しの力が働くことを想像してみて下さい・・・・
【沈 黙】大 洋
まずは、呼吸に意識を集中させてみて下さい・・・・ 自分は今、息を吸い込んでいるのだという事実に注意を向けましょう・・・・ また、今、息を吐き出しているのだという事実に注意を向けましょう・・・・
次に鼻孔を通り抜ける空気の流れに集中してみてください。 砂浜の波打ち際で、海の満ち引きをを眺めるときのように、 鼻孔を通る空気の流れに意識を集中してみて下さい・・・・
息を吸い込むとき、 あなたの鼻孔のどこに、空気が触れるのを感じますか?
息を吐き出すときには、どこに触れるのを感じますか? どちらか一方の鼻孔を通り抜ける空気の量が、 他方よりも多いというはありますか?
空気が出てゆくときと、入ってくるときでは、 空気の温度に違いがあるかどうか、観察してみてください・・・・
もっと深い意識の層で、あなたに作用するよう、これから想像力を駆使してみましょう。
吐き出される空気を、汚れた空気の流れだと想像してみて下さい。 その空気とともに、あなたの汚れが吐き出されてゆく・・・・ その際、どんな罪にも個別的に焦点を当てないようにして下さい。 ――ただ、あなたの自己中心性にだけ集中してみましょう。 また、あなたの恐れ一般に、意識を集中させる・・・・
さあ今度は、息を吸い込む方に注意を向け変えてみましょう・・・・ 神があたりに現存していらっしゃる。 そうした雰囲気を想像してみて下さい。 この空気には神が現存される。 その空気で、両の肺をいっぱいに満たしてみましょう・・・・ きっと、あなたは生きる力を与えられ、元気づけられる事でしょう・・・・
以上の様な手続きを行いながら、あなた全体が活気に満ち、 輝き始める様子を想像して下さい。

――「瞑想、今という永遠性を生きる❣」
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